侮辱罪はどんな場合に成立する?構成要件や名誉毀損罪との違いを解説

刑事弁護,刑法

侮辱罪という犯罪があります。
これは、平たく言えば、他人を侮辱したときに成立する犯罪です。

侮辱罪は、インターネットトラブルとの絡みで最近注目を浴びている犯罪です。

侮辱罪の構成要件や、これと似た名誉毀損罪との違いについて解説します。

侮辱罪とは「公然と人を侮辱したとき」に成立する犯罪

侮辱罪は、刑法231条に定められている犯罪です。

侮辱罪とは、事実を摘示しないで公然と人を侮辱したときに成立する犯罪です。

(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法 第二百三十一条 | e-Gov法令検索

構成要件(1)侮辱罪における「侮辱」とは

「侮辱」とは、他人に対する侮蔑的な価値判断を示すことです。

侮蔑的とは、あなどったりさげすんだりするということです。
誰かをあなどったりさげすんだりするような考え方を示すことが「侮辱」であるといえます。

侮辱罪において、侮辱は具体的な事実を指摘しないで行われることが必要です。
具体的な事実を指摘して行った場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

構成要件(2)侮辱罪における「公然」とは

「公然」とは、示された侮蔑的な考え方を不特定または多数の人が認識できる状態をいいます。

「不特定」とは、相手が誰か限定されていないという意味です。

「多数の人」とは、実際に多くの人が認識できた場合はもちろんのこと、特定・少数の人に対する言動であってもその場から広く外部に伝わっていってしまう可能性(伝播可能性)がある場合も含みます。

侮辱罪に科される刑の重さと公訴時効

侮辱罪に科される刑の重さは、「1年以下の懲役・禁錮」または「30万円以下の罰金」、「拘留もしくは科料」です。

侮辱罪の公訴時効は、3年です。

これまで、侮辱罪の刑の重さは「拘留(30日未満の身体拘束)」または「科料(1万円以下の金銭刑)」でした。
また、公訴時効は1年でした。
このように、侮辱罪の刑は刑法犯の中でも最も軽かったのですが、厳罰化がなされてこのように重い刑が科されることとなりました。

厳罰化の法改正より前の侮辱行為にはどのような刑が科されるのか

法改正より前に侮辱罪が成立する行為をした場合には、改正前の法律が適用されます。

これは、刑法6条で、犯罪後の法改正で刑が変更された場合には軽いほうを適用するということが定められているからです。

(刑の変更)
第六条 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

刑法 第六条 | e-Gov法令検索

このようなことから、侮辱罪の場合には、法改正以前になされた行為であればより刑が軽い当時の法律が適用され、厳罰化後の改正法は適用されないということになります。

名誉毀損罪との違いとは?

名誉毀損罪は、刑法230条に定められている犯罪です。

(名誉損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法 第二百三十条 | e-Gov法令検索

侮辱罪と名誉毀損罪との最も大きな違いは、具体的な事実を指摘したかどうかという点にあります。

侮辱罪は、具体的な事実を指摘しないで他人を社会的に軽蔑する行為です。
これに対して、名誉毀損罪は、具体的な事実を指摘した上で他人の社会的評価を下げる行為です。