大麻所持で逮捕された!手続きの流れや取調べ対応のポイントを解説
「家族が大麻所持で逮捕された……この後どうなるんだろう」
大麻所持で逮捕された場合には、起訴・不起訴が決定されるまでの間、最大23日間の身体拘束がなされることとなります。
また、その間には警察などにより取調べがなされます。
無罪を主張する場合であっても、罪を認める場合であっても、取調べへの対応は非常に重要です。
また、取調べに適切に対応するためには、弁護士のサポートが有意義です。
この記事では、大麻所持で逮捕された場合の手続きの流れや取調べ対応のポイントについて、弁護士が解説します。
所持が犯罪となる「大麻」とは何か
大麻を所持することは、大麻取締法24条の2によって犯罪とされています。
大麻取締法によって所持が犯罪とされる「大麻」とは、「大麻草」(カンナビス・サティバ・エル)やその製品のことです。
いわゆるマリファナ、ガンジャなどがこれにあたります。
大麻は、最近ではテレグラムなどのメッセンジャーアプリを使用して「野菜」などの言葉で取引がなされることがあり、比較的若い方を中心に広く流通している薬物です。
大麻の主成分はTHC(テトラヒドロカンナビノール)という物質です。
THCが、大麻に特徴的な精神神経作用を引き起こします。
THCは、法律上、規制対象とされている物質です。
THCに似た物質として、CBD(カンナビジオール)というものがあります。
CBDも大麻の成分のひとつです。
CBDは、THCと異なり法律上は規制対象とはされていません。
このためCBD成分の含まれた製品を所持・使用することは、犯罪ではありません。
CBD成分の含まれた製品は、大麻文化のひとつとして、若い方を中心に広く受け入れられています。
大麻を所持した場合の刑事罰
大麻を単に所持した場合には、5年以下の懲役が科せられます。
大麻を単に所持することを、単純所持とも言います。
これに対して、大麻を営利目的で所持した場合には、7年以下の懲役が科せられます。
場合によっては、7年以下の懲役に加えて、200万円以下の罰金もあわせて科せられることがあります。
「営利目的」とは、平たく言えば、大麻を売買するなどして利益を上げる目的のことです。
大麻の売人などとして大麻を所持していた場合が、営利目的の所持にあたります。
大麻の所持は逮捕される?
「実際のところ、大麻の所持は逮捕されるのか?」ということが、多くの方の気になるところでしょう。
残念ながら、大麻を所持していることが警察などに発覚した場合、多くの場合には逮捕されてしまいます。
現に大麻を所持しているところを押さえられた場合には、現行犯逮捕されてしまうことも珍しくありません。
一般的に、警察は、大麻を含めた薬物犯罪に対しては非常に厳しい対応を取ります。
そのことの当否はさておき、「大麻を所持していた場合には逮捕される可能性が十分にある」と考えても良いかと思われます。
警察から見れば、大麻を所持していた場合には、その場で逮捕しなければ現に所持している大麻という証拠を隠滅してしまう可能性が高いと考えられます。
また、大麻取締法違反の罰則は単純所持でも5年以下の懲役と比較的重いため、逃亡のおそれもあると思われます。
このようなことから、警察は、大麻を所持していたケースのうち多くの場合において、その場で逮捕に踏み切るのです。
大麻事件の逮捕後の流れ
大麻事件で逮捕された場合、逮捕によって身体拘束されている期間は最大72時間(3日間)です。
72時間の逮捕期間が経過すると、多くの場合、「勾留」の段階に進みます。
「勾留」とは、原則10日間の身体拘束のことです。
もっとも、多くの場合でさらに10日間拘束期間が延長されます。
これにより、合計20日間の勾留がなされることになります。
捜査段階における身体拘束は、最大3日間の逮捕の期間と最大20日間の勾留の期間を合わせて、最大23日間にも及びます。
最大23日間の身体拘束の後、検察官により起訴・不起訴の決定がなされます。
起訴された場合には、起訴後も勾留が引き続くことがあります。
前科を避けたい!大麻事件の取調べ対応のポイント
大麻事件には、いくつか取調べ対応のポイントがあります。
無罪を主張する場合
無罪を主張する場合には、捜査段階(取調べ段階)での対応が非常に重要となります。
取調べ段階では、「黙秘」をすることがとても大切です。
「黙秘」とは、取調べに対して何も言わないことです。
黙秘をする権利は、全ての被疑者に認められており、黙秘をしたからといって不利益に取り扱われることはありません。
捜査段階では、警察や検察による取調べがなされます。
取調べでは、罪を犯したことを前提に自白を迫られることもあります。
無罪を主張する場合には、絶対に自白をしてはいけません。
捜査段階で自白をした場合には、自白をした事実が調書に残され、その自白調書が後の裁判の中で有力な証拠として使用されてしまうからです。
いったん自白をしてしまうと、後から犯罪を否定すること(否認に転じること)は難しくなります。
自白後に否認に転じた場合には、後の裁判において、「当初の自白が信用できない」「後の否認供述のほうが信用できる」と裁判官に判断してもらわなければなりません。
しかし、現実的には、そのように判断してもらうことは難しいというのが実情です。
このように変遷した供述をしてしまうリスクを考えると、取調べ段階では黙秘をすることが最善であると言えます。
取調べを受ける中で、自分の主張を伝えたいという場面もあるでしょう。
そのような場合には、取調べの中で供述をして調書に残してもらうという方法を取るのではなく、弁護人を通じて捜査機関に言い分を伝えるという方法を取るべきです。
また、そもそもいくら捜査機関に言い分を伝えても、捜査機関が有罪・無罪を決定するわけではありません。
捜査機関に言い分を伝えるのではなく、裁判所に言い分を伝えるようにするほうが有意義です。
大麻事件で無罪を主張していく場合には、取調べ段階では黙秘を貫くことが、何よりのポイントです。
罪を認める場合
大麻の所持について、犯罪事実を認めるという場合があります。
このような場合でも、取調べ対応のポイントはあります。
罪を認める場合には、捜査機関の取調べに対しては、基本的には自分の記憶に従って正直に話すようにするとよいでしょう。
捜査機関の取調べに対して正直に話すことで、捜査が早く進み、釈放が早まる可能性があるからです。
また、取調べの初めの段階から一貫して罪を認めて正直に話していたことは、その後の裁判においても有利な事情として考慮されることがあります。
しっかりと反省をしているからこそ、自らの犯した罪について正直に話しているのだと判断されやすくなるのです。
一貫して罪を認めて反省していた事実が裁判において有利な事情として考慮された場合には、執行猶予付き判決を得ることができる可能性も高まります。
もっとも、取調べにおいて罪を認めるにあたっては、注意するべき点もあります。
それは、自己が認めている以上のことを調書に取られないようにすることです。
場合によっては、捜査機関は、あなたが認めている事実を超えてより重い罪を自白させようとすることもあります。
そのような場合には、しっかりと調書を確認して、自分が何を認めて何を認めないのかをはっきりと伝えるようにしましょう。
捜査機関が、あなたが自白している以上のことを調書に取ろうとしている場合には、きっぱりと拒否することも大切です。
罪を認める場合であっても、弁護人がついていれば、取調べにおいて捜査機関が自白の強要などの不適切な行為を行っていないかチェックすることができます。
また、取調べでどのように話をするのかについても、アドバイスをすることができます。
罪を認める場合であっても、弁護人のしっかりとした弁護活動が重要であることは、無罪主張をする場合と変わりありません。
大麻事件で逮捕されたら弁護士に依頼しよう
ここまででご説明したように、大麻事件で逮捕されたら、弁護士をつけることがとても大切になります。
弁護士をつけることで、より適切に取調べに対応することが可能になります。
逮捕されたご本人のために弁護士をつけることは、その家族や恋人なども可能です。
もしもご家族が大麻で逮捕されてしまった場合には、ご家族のためにすみやかに弁護士をつけるようにしましょう。