障害者が子どもをつくれなくする手術を受けたことで国に賠償を求める事件について最高裁判所で弁論が開かれます(いわゆる旧優生保護法不妊手術強制国賠訴訟)

憲法・人権,時事

かつて、障害者が子どもをつくれなくする手術をすることができるという法律のルール(旧優生保護法)がありました。このルールに基づいて子どもをつくれなくする手術(不妊手術)が行われたことついて、いま裁判で争われています。

2024年5月29日午前10時30分から、最高裁判所大法廷において裁判の場(弁論)が開かれます。弁論では、裁判を起こした人(原告)と裁判を起こされた相手(被告)とがそれぞれ、お互いの主張を裁判官に言葉で伝えます。

抽選に当たれば誰でも弁論を聞くことができます。抽選には、当日午前9時30分までに最高裁判所の西門で整理券を受け取ることで参加できます。

次の文章は、どのようなことで裁判が行われているのかを最高裁判所がまとめた文章をもとに、さらにわかりやすく読みやすい形に直したものです。

1.これはどのような事件ですか?

1-1.誰が何を求めているか

この事件で、裁判を起こした障害者である原告らは、自分自身や結婚相手が昔の法律に基づき子どもをつくれなくする手術を受けたと主張しています。

原告らは、裁判の相手である国に対し、つぐないのお金である賠償金の支払いを求めています。

1-2.賠償を求める理由は何か

賠償を求める理由は主に3つあります。

1つ目は昔の法律が国の最も基本的なルールである憲法に違反していることです。

2つ目は国会議員がこの間違った法律をつくったことです。

3つ目は厚生大臣が手術を止めなかったことです。

1-3.最高裁判所で審理が行われていること

裁判は5件あり、最高裁判所の15人の裁判官全員による審理がなされています。

1-4.昔の法律とは何か

この昔の法律とは、1945年9月11日から1996年9月25日までの間に有効だった「優生保護法」という法律です。

この法律は、障害のある人に対して子どもをつくれなくする手術ができることなどを定めていました。

2.これまでの裁判ではどのような結論でしたか?

2-1.これまでの裁判での結論

前に判断した高等裁判所は、5件全てについて子どもをつくれなくする手術の根拠となった昔の法律は憲法に違反していると判断し、違法な行為があったとして、賠償を求める権利がいったん発生したことは認めました。

もっとも、5件全てについて賠償金の支払いを認めたわけではありません。

2-2.賠償を認めた事件とその理由

そのうち4件については、次のように判断しました。

まず、20年間が経つことで権利を失うことを定めたルール(民法724条後段)があり、この20年間は過ぎており、本来であれば権利が消えてなくなるとしました。

そのうえで、今回は権利が消えてなくならない特別な事情があると判断し、原告らが求める賠償金のうち全部または一部を認めました。

2-3.賠償を認めなかった事件とその理由

残りの1件については、時間が経ち過ぎているために賠償を求める権利が消えてなくなったと判断し、賠償金の支払いを認めませんでした。

3.最高裁判所で争われる一番大切なところは何ですか?

今回、最高裁判所で争われる一番大切なところは、「原告らの持つ賠償を求める権利が、時間が経ち過ぎたことによって消えてなくなったかどうか」ということです。

参考:国家賠償請求事件について|最高裁判所広報課